2002/04/07
近視の話(追加)
近視の話を書いた直後になって、新しい学説が発表されました。この学説について取り上げたいと思います。
アメリカの進化生物学のコデイン教授及びオーストラリアの栄養学のジェニー教授の共同研究によると、子供のときにシリアルフードやパンなどの、精製でんぷんが多量に含まれた食品を摂取すると、近視になるそうです。一応、理屈としては精製でんぷんは体内吸収率が高く、早く消化されるため、すい臓から分泌されるインシュリンの量が増加して、眼球の成長を調整する「たんぱく質3」因子(こんな因子は私は生まれてから一度も聞いたことがない)が減少し、眼球が長くなってしまい焦点が合わなくなるため、近視になるというものが用意されています(原理的には既に紹介した「明るい光の中で寝る子供が近視になりやすい説と同じ)。しかし、この学説に関しては、はなはだ疑問があります。例えば、その根拠となったのがバヌアツ群島の子供の近視発生率ですが、これが2%で、彼らが白パンやシリアルよりは魚、ココナツを食べるからだということなのですが、それを言うなら、世界最大のパン・シリアル消費国家であるアメリカの近視発生率が、他国に比べて極めて低いことはどう説明するのでしょう。また逆にパンよりも消化効率の低いごはん食である日本で、極めて近視率が高いのも説明できません(具体的な数字を出すと中高生近視率は日本が55%、シンガポールが49%に対してアメリカは僅か25%に過ぎない。ちなみにシンガポールも米食文化圏)。また、インシュリンの量の増大を云々するなら、麦芽糖→ブドウ糖という変異プロセスを必要とする精製でんぷんよりも、直接的な糖分であるココナツのほうが遥かにインシュリン量を増大させると思うのですが。
これらの「事実とは異なる自分たちにとって都合の良いデータだけを用いているように思われる」という事実から、この学説にはどうも怪しいものを感じます。で、どこの学会発表かと思ったら、科学専門誌に載せただけなのね。


 

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