2002/04/06
近視の話3
続きです。
「近視予防法」の骨子は「身体を強健にする(偏食したり室内に篭ると近視になる)」「目の疲労を防止する(読書や精細な作業を長時間持続すると近視になる)」「姿勢を正しくする(30センチ以内の距離で読書すると近視になる、寝転んで読書すると近視になる)」「採光に注意する(暗いところで読書や勉強をすると近視になる)」「印刷物に注意する(文字の小さい本は近視になる)」といった、現在の偏見の根源があります(もちろん全て科学的根拠などない)。この「近視予防法」は思わぬ副作用を生みました。近視の女性も非国民扱いされたのです。当時の日本では女性を兵士として使うつもりは無かったのですが、民間では「近視の女性は近視の子供を産む」と、嫌われたのです(どうやら軍や当時の医学会が定めた法律よりも民間のほうが本質をついていたようだ)。そのため、近視とわかると結婚ができなくなるという女性もいたようです(眼鏡っ子萌えな人達、戦時中に生まれなくてよかったね)。さて、一番普及率の高いアメリカで近視者が極めて少ないという現実的な反証データがあるにも関わらず当時は存在していなかったテレビが、どうして日本では近視の原因とされたのでしょう。ほとんどはこの「近視予防法」という悪法を基準にして読書をテレビに置き換えただけだと思われますが、それ以外にも理由が幾つか挙げられています。実はテレビには「対角線の5倍ほど離れてから見る」というのがあります。これは目が悪くなるからではなく、単純にテレビ画面の画素数の問題で、画像の粗が目立たない距離として定められたのです。これが先ほどの「近視予防法」と結びついたのでしょう。ちなみに、ハイビジョンテレビは「対角線の3倍」でディスプレイは「対角線の等倍」が基準となっています。
進化論から近視の有無を考えることもできます。サン族(昔はブッシュマンと言っていたが差別的ということで「家畜を持たない怠け者」を表すサン族に言いかえられた)の視力が良いのは視力の悪いサン族が生存できずに淘汰されたからで、日本では近視が淘汰されることが無かったからということですね。


 

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