2002/01/04
イスラムの話3
続きです。
神の啓示を受けたマホメットは自分自身は風の精霊であるジンに取りつかれたのではないか、と考えたと述べられています。そのため、マホメット自身、啓示に関してはかなり後になるまで誰にもしゃべりませんでした。しかし、このようなことがたびたび起こるようになると、ついに最も信頼できる妻ハーディージャにこのことを打ち明けました。この話を聞いたハーディージャは心配になり、アラブ社会では珍しいキリスト教徒だった従兄弟に相談したところ、彼はキリスト教ではかつて神の啓示を聞いた者が多数いたので、マホメットも彼らと同じような預言者ではないか、と答えます。これを妻から聞いたマホメットが神に問うと、この神様(アッラー)はそれを肯定し、「私がせっかくキリストに預言を与えたのに、人はその言葉を間違って解釈しているようだから、かわりにお前が人々を導くのだ」というような意味のことを言って、マホメットに布教を勧めるのです。しかし、マホメット自身は不惑の40歳、しかも極めて普通の商人ですから、布教といっても辻説法なんか恥ずかしくてできませんし、どうしていいのかわからずに途方にくれます。そして悩んだ上に出した結論が、まずは親戚から布教しよう、というものでした。こうしてまずは奥さんを信徒にします。それから親戚に布教してまわりました。もちろん、親戚の中には入信する人もいれば、あかるさまに馬鹿にする人もいました。当時入信した人達は、入信の理由としてマホメットが突如神懸り状態に陥り、そこからきれいな詩が詠唱されるのを見て驚いて入信したと言われています。マホメット自身は(密かに隠していたのでなければ)詩の才能はなかったのに、彼の口からきれいな詩が出てくるのだからこれはマホメット以外の者の言葉に違いない、マホメット以外といったら誰だろう、きっと神様に違いない、という三段論法ですね。これには普段のマホメットの温厚で正直な性格が大いに役立ちました。
続きます。


 

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