2001/01/31
停電の話
アメリカのどっかの州が長期停電してますね。なんであんなことになったのかご存じですか?
そもそも、あの州の最大の失敗は電気の自由化に踏み切ったことです。あの州には大きな電力会社が二社あり、一種の独占状態でした。そのため電気代が高いという批判があり、だったら自由化すれば価格が下がる、という非常に単純な思考で自由化を行いました(もともとあの州は環境問題に熱心でそのためコストが高いということもあった)。発電事業を競争させて低価格で供給すれば、販売価格も下がると見込んだのです。その自由化の方法も、その大手二社の発電所の半数以上を強制的に売却させるという方法を取り、ただし電力そのものの販売はもともとあった二社のみが行えるようにしました。そのため、二社以外の全ての会社が電力を販売しないという不測の事態が起こったときに供給できる電気は半分に減ってしまいました。なぜこのような方法を取ったかというと、自由化したくても大手二社が発電事業を持ちつづけていると体力の差で新規参入業者が倒れるから、という、これは当たりまえと言えば当たり前の判断だったのです。ところが蓋を開けてみると燃料の天然ガスは高騰するし、水不足で水力発電は能力を失うし、環境問題で原子力発電は使えないしで、電力そのものの量が減少。おまけに完全自由化のことを考えて余分な発電所を作って電力を余らせたくないと発電会社が考えたため、発電所の量が不足していました。その結果、本来は過当競争を起こさせて発電事業の電気代を下げるつもりが供給不足で発電事業の電気代を高騰させるという皮肉な結果になってしまったのです。さらに過当競争で発電電気代が下がるだろうという思い込みが、さらなる愚行を引き起こしました。電気の小売価格の凍結と電力代金の長期契約の禁止です。そのため発電電気代が電力販売価格を上回ってしまい、二社は借金地獄に落ちてしまいました。こうなると発電事業のほうも未払いが起こるのを恐れて電力を売り渋り、まさしく悪循環に突入したのです。
州政府の「勝手な思い込み」が今回の未曾有の事態を引き起こしました。日本も電気の自由化を行うそうですが、大丈夫でしょうか。日本の政府は州政府よりも「勝手な思い込み」が得意ですからねぇ。


 

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