2002/12/12
RISCは敗北したかの話2
続きです。
RISCは言語とマシンのギャップをコンパイラなどで吸収しなければならないなら、コンパイラで吸収すればいいじゃないかという極めて単純な思考逆転の元に誕生します。CISCの問題であった複雑な処理は一切行わず、常に単純で衝突を起こさない命令だけを処理すれば、CPUのパワーはクロック速度に比例するはずであり、CISCの複雑な命令といっても単純な命令を10個組み合わせれば実現できるのであれば、CPUの速度をCISCの10倍にすれば速度は同じ、という極めて論理的な発想です。現在のシリアル全盛から考えれば、この思想は決して間違っていなかったはずなのに、RISCは敗北しました。その原因は高速化に限度があるという点につきます。高速化すればするほど、開発・製造コストが高くなります。例えば100MHzのCISCを凌駕するためには1GHzのCISCが必要と考えれば、どちらがより大変か判ると思います。しかも、RISCは市場をワークステーション分野に展開したのですが、ワークステーション分野は思ったよりも成長しませんでした。その結果、開発コストをペイできるだけの収益が上がらず、ジリ貧にならざるを得ませんでした。結果としてRISCは初期の教義を捨てて複雑な命令も取り込むようになり、その結果CISCに近づいていってしまったのです。一方、CISCは市場をパーソナルコンピュータ分野に展開しました。この分野は極めて成長したため、開発コストを充分ペイできました。そのため、豊富な資金を元に機能の高速化や研究などを行うことができました。また一部でRISCの思想を取り入れたりもしました。つまりCISCは多機能命令+RISCという仕組みに変わり、RISCはRISC+多機能命令と変わっていったのです。あくまでRISCという思想に引きずられながらも、やむを得ず多機能化したRISCと、初めから多機能化を目指し、速度向上のためにRISCの思想を利用させてもらったCISC。これでRISCに勝ち目があるとは思えません。
続きます。


 

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