2002/09/15
CMMの話3
続きです。
CMMを推進する企業は、誰がいつ辞めても大丈夫な企業となります。しかし、このことは仕事を無くしてしまうという恐ろしい罠を含んでいるのです。これは日本だから発生する現象といえるかも知れませんが、日本における受託開発は企業と企業というよりも個人と個人によるものが大きいのが現状です。例えば、てんてんがやった仕事の継続案件や拡張案件は、顧客からはてんてんという人物に対して要求されます。しかし、CMMを推奨してしまった企業は、継続案件や拡張案件を採ろうとしたときは既に前の担当者が居なかったりするのです。もちろん、CMMというものが顧客にも浸透していれば、担当者が代わっても大丈夫だということが判るはずですが、顧客は基本的に過去の経験から、担当者が代わると仕事がうまくいかなかったり納期に間に合わなかったりすると考えてしまいます。そのため、継続案件や拡張案件は、前の担当者が辞めた会社に頼むことはなく、前の担当者の移籍した会社に頼んだり、まったく別の、もっと安い企業に頼んだりすることになります。日本における受託開発は、その収入の大部分が継続案件や拡張案件によってなされています。最初の案件で多少の赤字が出たとしても、継続案件や拡張案件を受けて黒字になればよいという感覚で最初の案件は出血サービスになりがちです。そのため、これらの案件を失うことは致命的となります。それが、CMMを推奨した企業が低迷している理由です。日本人はアメリカ人ほどドライではなく、もっとウェットなのです。
このような事情から、日本においてCMMを推進するには、かなりの覚悟が必要です。しかし、日本政府は政府関係の仕事にCMMのレベル取得を要求するように規約を改定しつつあります。もちろん、もともと外資系でドライな企業や、政府関係の仕事だけを受ける企業ならそれでもいいでしょう。そのかわり、通常の受託開発はできない会社になります。つまり、これは企業に政府御用達になるか、死ねと言っているのです。


 

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