2002/05/11
口蹄疫の話3
続きです。
口蹄疫は偶蹄目(蹄が偶数個)の動物なら、感染します(牛・豚・羊・山羊・しか・猪など。馬は奇蹄目のため感染せず)。蹄のついていない動物に感染することはありません。つまり、人間に感染することはありません。しかし、家畜のほとんどが対象になるため、殺処分にすると凄いことになります。そのため根絶は諦めて口蹄疫と共存すべきではないかという考えもあります(実際、1920年にイギリスでは議会投票にまでなった)。殺処分に関しては、国際獣疫事務局が1957年になって「口蹄疫予防のための国際条約」によって正式に定められました。口蹄疫は実はあまり感染力が高くないのですが、現在流行しているO型だけは特別で、極めて感染力が高いようです。これは世界中を巡っており、もとは1990年にインドで発見されたものがサウジアラビアに入り、トルコ、ギリシャ、ブルガリヤ、イラン、イラク、シリア、イスラエル、レバノン、ヨルダンの中近東にまで拡大し、反対側はネパール、ブータン、チベット、中国、台湾、ベトナム、カンボジア、タイ、マレーシア、ラオス、モンゴルなどに拡大しました。さらに船を経由して南アフリカにも到達し、そこから輸入した肉が原因でイギリスへ渡り、フランスにまで及んでいます。なお、日本での口蹄疫は2000年初頭に、およそ100年ぶりに宮崎市で発見されました。このケースでは、蹄に水泡ができていなかった(鼻や口には症状が出た)ことから、口蹄疫ではないと言い逃れようとしたようですが、さらに16頭の牛が感染したため、家畜伝染病予防法に定める家畜法定伝染病ということもあって、海外悪性伝染病防疫要領に従って移動制限地域が設定され、農場の完全消毒および全飼養畜の殺処分が行われました。直後に今度は北海道で口蹄疫が発見され、同様に移動制限地域が設定され、5万頭以上の動物に対する血清調査が行われたのちに安全宣言が出されました。
これは珍しく厚生省がまともに働いたケースで世界的にも高い評価を受けました。狂牛病対策で全てパーにしましたけれど。


 

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