2002/05/07
ビリヤードの話4
続きです。
I君は言いました。「こいつ強いって評判だったけど、ただの雑魚じゃん」と。その一言が私を本気にさせました。「わかった、じゃあ本気でやる」。私はそう宣言しました。彼の上手いというのは、所詮はそこそこ上手いレベルでした。クッションが処理できるとか、遠くの的球に当てられるというレベルで、次の次の球まで見て、戦略を立てるというレベルには達していなかったのです。たしかにブレークエース(最初の一打目で9番ボールを入れること)が1回ありましたから、それなりに上手いのでしょう。しかしレベルが違いすぎました。私はもっともゲームが早く終わる方法を取ることにしました。ナインボールには、あまり知られていないルールがあります。それは3ファール負けです。3回連続でファールしたら、負けというルールです。私は彼をセーフティ地獄に叩き落しました。相手にファールをさせ、ファール後のショットでは的球が落とせる位置であっても敢えて落とさずにセーフティにし、それをひたすら続けるという悪魔の技を使ったのです。最終的な戦績は私の17勝7敗。圧勝でした。最後のゲームで3ファール負けをした彼は「つまんねーよ」と言ってキューを放りました。そして、伝説が生まれました。生まれましたが、私はそれから大学では二度とキューを握ることはありませんでした。就職してからも、キューを手にすることは、ありませんでした。自分の信念を曲げたことに対する自己嫌悪。それが、私からビリヤードを奪いました。
それから数年が経ち、久しぶりにビリヤードをする機会に恵まれました。相手は上手いと評判の、とある人でした。結果は私の完敗です。ブランクやその他の言い訳ができないほどの完敗。恐らく全盛期の私でも半分勝てるか勝てないか、K君クラスの腕の持ち主でした。彼に遊ばれているのがわかりました。それでも負けて楽しいビリヤードをさせてもらいました。前半はともかく、後半は相手も楽しいビリヤードができたと思います。久しぶりに練習がしたくなりました。


 

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