2002/04/28
分散コンピューティングの話5
続きです。グリッドコンピューティング手法の説明を読むと、良いことばかり書いてあり、しかも今までの問題は全て解決するみたいな、オーバーな表現だったりします。私にはグリッドコンピューティング手法に、まったく問題が無いとは考えられません。以下、問題点を指摘してみます。
まずはセキュリティの問題です。もっとも、これは恐らくまっさきに解決されるであろう問題なのでたいして心配はしていません。似たような問題ですが、個人的感情の問題です。自分のコンピュータの処理能力が知らない間に他人に利用されていることに対する抵抗は、たとえギブアンドテイクだと説明しても必ず存在すると思います。不正データの排除問題もあります。SETIで高速な代わりに不確かなデータを流すプログラムが流通して混乱を招いたのは記憶に新しいところです。プログラミングの複雑さの問題もあります。どのように機能を分解して、どのように割り振るのか、処理中マシンがロストしたりという特殊な状況もきれいにスケジューリングできるプログラムの複雑さは想像も出来ません。プログラムが複雑になれば、それだけバグの発生も多くなります。専門処理が必要な場合の割り振り。分解できないような大きな処理と置き換えても良いでしょう。これは前回の人のたとえで考えればわかりますが、なんでもそこそこに出来ても、本当にコアな部分は専門家でないと駄目ということがあります。原因究明が困難な点も挙げられます。。何らかのトラブルが発生した場合にどこに原因があるのかを調べるのは、参加マシン台数の階乗倍に困難になります。また、このことはトラブルが発生した際の責任が不明瞭になるという問題でもあります。さらに、スケジュールを管理するためのコンピュータには大型コンピュータを使わなければなりません。そして、そこにトラフィックが集中するという問題を抱えています。
結局、これらの問題が解決されない限り、せいぜいがSETIやUDのような学術利用が限界で、実用的なグリッドコンピューティングは難しいのではないかと思います。とはいえ、新技術としての可能性はピカイチですから、今後の発展を見守る必要があるでしょう。


 

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