2002/01/14
宿便の話1
随分前の話になりますが、星新一氏のエッセイか何かで、医師の監視の元、断食に挑むというのがありました。その話の中で数日後に真っ黒な便が出て、これが宿便だ、と書いてありました。このときは私は星新一氏の冗談だと思って笑い飛ばしていたのですが、最近になってこの宿便について星新一氏のエッセイを元に語ってくれた人がいて驚きました。いまだに宿便などという迷信を信じている人がいるものなのですね。そういうわけで、今回のテーブルトークは宿便というものが何故迷信であり、存在し得ないかについて書きます。
宿便というものについて、まず辞典で調べてみると、「便秘のせいで腸の中に長い間たまっていた便」とあります。では便秘でないなら、宿便は存在しないということでしょうか。この認識は実はかなり正解に近いのですが、この点については後で書くことにして、むしろダイエットなどで一般的に使われているらしい宿便の定義について述べておきましょう。腸の内壁には細かいひだがあります。ひだですから、当然山の部分と谷の部分があります。蛇腹を想像してもらえばわかりやすいでしょう。そのうち、谷間の部分に何ヶ月、何年とこびりついたままになっている大便のことを宿便というそうです。宿便は長時間こびりついたままですから、固くなっており、ちょっとやそっとのことでは剥がれません。また、この便は黒くて臭いそうです。あまりの非科学さに思わず頭を抱えてしまいましたよ。だいたい、この宿便論自体が大きな矛盾を抱えています。宿便論について書かれているものを読むと、宿便は肥満の原因とかダイエットの敵とか書いてあるんですよね。そもそも栄養がどのような形で体内に取り入れられるかは、義務教育の範疇で習うことですが、そのほとんどは腸内の腸壁から吸収されます。もし、本当に宿便というものが存在し、それが腸壁にこびりついているのなら、栄養吸収が阻害され、むしろ痩せなければおかしいことになります。
続きます。


 

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