2001/10/05
スリランカの話
日本は昔から日本なので国家というものの存在が未来永劫のように思われるのはある程度仕方がありませんが、世界では国など、ソ連を例に出すまでもなく、あっというまに消えてなくなったり変わることがあります。国が変わると今までその国名で呼ばれていた製品までも名前が変わってしまうことも当然あるわけです。紅茶の中でも、私が特に好きなスリランカティもそういった、「国が変わって名前が変わった製品」の一種です。
スリランカティのうちでも特にウヴァというのはインドのダージリン、中国のキーマンと合わせて世界の三大紅茶ブランドなのですが、もともとはセイロンティと言っていました。ところがセイロンという国がなくなってしまったため、今はスリランカティというようになりました。スリランカというのはシンハリ語で「光輝く国」という意味です。スリランカで取れるウヴァはハイグロウンティ(標高の高い地域で取れたお茶のこと)で、特に味が濃く、苦いためゴールデンリング現象が起こります。ゴールデンリング現象というのはコロナとも言い、紅茶をカップに注いだ際に光の反射によってカップのふちに金色の輪が出来る現象です。光輝く国のお茶で金色の光の輪が出来るなんてのはちょっと出来すぎな感もありますが、洒落が効いていて面白いですね。スリランカという国は紅茶以外ではあまりなじみはないのですが、実は日本列島分割の危機を防いだ国でもあります。サンフランシスコ条約の際に日本の分割統治に対して反対し、さらに賠償請求権までも放棄したのがスリランカのジャヤワルダナ大統領です。そのためではないでしょうが、四カ国分割統治案は廃案となりました。
スリランカの社会情勢は安定には程遠く、いまだに内戦状態です。シンハラ族、タミル族という二つの民族が存在する限り、この内戦は恐らく収まらないでしょう。よって、常に政情不安定な国家ということになります。今のところは均衡を保っていますが、この内戦が拡大すれば、内戦のために飲めなくなったトアルコトラジャコーヒーのようにスリランカティが飲めなくなるかもしれませんね。


 

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