2001/07/17
ハム役者の話
日本では下手な役者を大根役者と言います。これの語源を調べてみると諸説あって実は定かではありません。
定説としてよく知られているのは大根は煮ても焼いてもどう食べても食あたりしないから、当たらない役者のことを大根役者というというものですが、これが正しいという証拠は何一つありません。それでも「日本人の常識」だそうです。これ以外の説ですと、大根はすぐにおろされるからというものや、大根のずん胴で鈍重な姿が下手な役者に似ているという説、変わったものでは歌舞伎の立役者が顔料を落とす時に大根を用いていたため、その大根を立役者の脇で切っていたお付きのことをそう呼んでいたという説なんてのもあります。私がそれっぽいなと思うのはこれらのどれでもありません。「東海道中膝栗毛」の一節に、京都の芝居小屋の話しがあり、その中で役者に向かって「大根ウ」と揶揄したという話があるのですが、京都では大根をダイコウと言っていたとするならこれが泥偶(泥人形)か木偶(木人形)が変化したものという、人形のような演技しかできない役者というものです。さて英語にも大根役者のように下手糞な役者を揶揄する言葉があります。Ham Actorです。ハム役者なわけですが、こちらも語源がはっきりしません。有名なものではHam McCulloughという舞台俳優が主催する劇団に所属する役者をHam Actorsと呼んでいたのですが、この劇団がいくら熱演してもまったくヒットしなかったことから、当たらない役者のことをHam Actorと言うようになったという説。また、昔は化粧を落とす場合、ハム肉の脂身で落としていたことからという説や、シェークスピアのハムレットは誰が演じても当たるので演技力が要らないことから来たとする説など、多彩です。それにしてもどちらも食べ物で役者を再現し、語源がはっきりしないなんて妙なところで共通点がありますね。
ところで、アマチュア無線のことをハムと言いますが、これの語源もはっきりせず、実はアマチュアというところからHam ActorのHamだなんて説もあります。


 

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