2001/02/10
金田一の話
「金田一耕助を守る会」という会をご存じでしょうか。このファンクラブは日本の推理小説の世界では歴史的な組織なのです。
実はこのファンクラブは日本で一番最初の「日本の探偵にできたファンクラブ」なのです。このファンクラブができる前は日本の推理作家に対するファンクラブはありましたが、日本の推理小説作品の登場人物に対するファンクラブはありませんでした(ただし日本のシャーロキアンが「バリツ倶楽部」という組織を作っていたので、登場人物に対する最初の組織ではない)。この歴史的なファンクラブは金田一耕助の独身を守るために結成され、実際に作品中に金田一耕助と仲の良くなる女性が現れると作者に対して結婚させないでという嘆願書を送ることもあったそうです。横溝正史氏自身もこの会に対して「これほど純粋に金田一耕助を愛してくれる人々を裏切ることはできない」と語っており、そのため「金田一耕助は死ぬまで独身です」ということを明言されております。さて。90年代に私はある少年漫画誌を読んで衝撃を受けました。その作品には金田一耕助の孫を名乗る登場人物が出てきて、「偶然の入る可能性を入れてはならないという推理小説の基礎を無視した、荒唐無稽の」事件を解決するというあらすじでした。この作品は笑止なことに「本格推理漫画」と言われ、後に某漫画大賞をも受賞したのですが、「金田一耕助を守る会」やそれに対する横溝正史氏の回答などを知っていて行ったのでしょうか。横溝正史氏の本格的な推理小説を愛読した私にとってはあの作品は箸にも棒にもつかない駄作であり、あまりのひどさについに当時愛読していたその週刊少年誌そのものを読むのをやめさせる要因ともなった作品なのですが。
というような内容の話を5年ほど前、あるBBSに上げたところ、それがどう巡り巡ったのか金田一耕助を守る会の元会員の手に渡り、最近になってメールを頂きました。「金田一耕助は独身なのだから、あれは孫を名乗る詐欺師が勝手にやってることと考えれば腹も立ちません」とのこと。さすがに、あの会は大人だなぁ。


 

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