2001/01/09
朝三暮四の話
朝三暮四というのがあります。知らない人はいないと思いますが、一応説明しますと、これは荘子(以前テーブルトークの中で挙げた「あの」荘子)の中にある話で、猿回しの親方が猿にどんぐりを朝に三杯、夜に四杯あげるといったら猿が怒ったので朝に四杯、夜に三杯あげようと言ったら喜んだ、という話で、実質的には何の違いもないのに目先の違いにとらわれることを言います。
これって本当に実質的な違いがないのでしょうか。これは以前にあおい氏が言ったロシアンルーレットの話と同じです。このロシアンルーレットの話というのは、ロシアンルーレットはいつ撃っても当たる確率は1/6だから先手後手に有利不利は無いという嘘を暴いたものです。ちょっと説明しますと、先手が引き金を引いたときに先手が死ぬ確率は1/6ですが、このとき後手が死ぬ確率は0です。つまり後手が有利。次に後手が引き金を引いたとき、後手が死ぬ確率は先手が死なない確率×現在の当たる確率=5/6×1/5で同じく1/6となりやっと先手と後手が並びます。次に先手が引き金を引いたときに先手が死ぬ確率は2/6ですが後手が死ぬ確率は依然1/6です。つまりロシアンルーレットは先手が圧倒的に不利なのです。朝三暮四もそうです。朝に四杯のどんぐりをもらっておけば夜にどんぐりをもらう前までは四杯のどんぐりをもらっていることになりますが、朝に三杯しかどんぐりをもらっていなければ夜にどんぐりをもらう前までは三杯のどんぐりしか得ることができません。つまり朝にどんぐりをもらってから夜にどんぐりをもらうまでの間は朝四暮三のほうが有利なのです。これは連続的でない事象を連続事象として扱うと発生する間違いなのです。朝三暮四もロシアンルーレットも量と時間のグラフを書くと直線にならず、階段状になります。これを微分して直線と思いこめば思わぬ誤差が出るのです(1m×1mのエリアを1cm上に行ったら1cm右に行くという方法で対角まで辿りついた場合、線の長さの合計は2mになります。√2mではありません)。
私は朝三暮四の意味を次のように変えるべきだと思います。本質的な違いがあるのにも関わらず、合計が同じだからといって同じだと思いこむ愚か者を指す言葉、と。


 

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