2000/10/26
さすがの話
さすが、というのは漢字で「流石」と書きます。これはかなり有名なのでほとんどの人が知っていると思いますが、さすがに何故漢字で「流石」と書くかまでは知らない人も多いと思います。。今日は「流石」の語源を書きます。
以前のテーブルトークで書いた荘子を初めとして、中国にはどうもソフィストというか詭弁家が多いのですが、今から話す孫楚という人もそうです。この人、日本では有名な三国志の後の晋という時代の人なんですが、頭はいいんですが、なかなか出世しない。そこで王済という人のところで酒飲んで愚痴をこぼすわけです。ちょうどこの時というのは長く続いた乱世もそろそろ終焉というときだったのですが、もちろんそんなことはわかるはずもありませんのでまだまだ続くだろうということで世捨て人になる人が多かったようです。もう、俺は駄目だぁ、こうなったら出世の道も全部捨てて俺も世捨て人となって石を枕に、流れで口を漱ぐ(すすぐ)ような生活してやるとか言い出すわけです。これは枕石漱流という有名な言葉だったんですね。ところが、この晋の孫楚さんは間違えて漱石枕流と言ってしまうんです。それで王済に突っ込まれます。お前、流れを枕にして、石で口を漱ぐのか、それを言うなら枕石漱流だろうが、と。ところが孫楚さん、そこはソフィストですから流れに枕するのは耳を洗うためで、石に漱ぐのは歯を磨くため、これは俗世で汚れた体をさっぱり身奇麗にしたいのだ、とか言い出します。王済含めた周りの人々は何故かそのへ理屈を聞いて呆れ返らずむしろ「さすがだ、うまいぞ」と感心したそうです。この故事が日本に入ってきて以来、さすがを「流石」と書くようになったそうです。ちなみにこの孫楚の孫が東晋の廷尉卿、孫綽です。
あおい氏に孫楚って知ってる?と聞いたところ、「ああ、金之助さんの語源」と返ってきました。金之助というのは夏目漱石の本名です。そう、夏目漱石の漱石というのはこの漱石枕流から取ったんです。流石はあおい氏。


 

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