2000/09/20
水の妖怪の話
ケルトの妖精の研究をしていた私は日本の妖精、つまり妖怪に関しても多少の知識があります。その分類をしているときにあることに気づきました。日本には風火水土のうち水を象徴する妖怪がいません。その他の象徴妖怪はいるのですが。
例えば風を象徴する妖怪は天狗です。天狗は空気鉄砲で武装し、芭蕉扇のように風を起こすうちわを持っています。これは明らかに風を象徴する妖怪です。火の象徴妖怪というのは鬼です。鬼というのは火を象徴しており、だから体は赤色です。虎の服というのも実は虎というのは火に強い生き物だと思われていましたので不自然ではありません。体が青い青鬼だっているじゃないかって?実は鬼というのは本来は赤鬼しかいませんでした。青鬼はのちに出来たものです。土の象徴妖怪はあまり知られておらず、非常に難しいのですが、土蜘蛛というのがあります。これは名前だけでなく性格も土を現しています。ここまで書くとそろそろ水を象徴する妖怪だってちゃんといるじゃないか、という反論もあると思います。河童と竜です。この二つは確かに水を象徴しています。ですがこの二つの妖怪は中国からの輸入品で日本独自の妖怪ではありません。天狗も一見中国からの輸入品に見えますが中国の天狗は日本でいうところの烏天狗であり、天狗のお面で知られているあの鼻の長い天狗というのは名前こそ同じですがまったく別の妖怪と見ることが出来ます。では、日本において水を象徴する妖怪はどこに行ってしまったのでしょう。私はこれは人に溶け込んだと見ています。他の妖怪は妖怪としてのアイデンティティを保てましたが島国日本では水の妖怪はあまりに身近すぎたために人に溶け込んでしまい、その力は抽象的な表現でしか記せなくなったのではないのか、と。
今でもみなさんは水の妖怪の子孫を見出すことがあります。天候を自由に操る能力を持つ人を、日本にしかない独特な表現で。あの人がいると雨が降る、そう、雨男に雨女。彼等こそが実は水の象徴妖怪なのです。


 

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