2000/08/29
忌み言葉の話
忌み言葉というネタは前から考えてはいたのですが、書く時期がまずいと大変なことになるので今まで書けなかったのです。とりあえずまだ受験には間がありますし、結婚式の季節は6月がピークですから、今のうち、今のうち。
忌み言葉というのは結婚式で「帰る」とか「離れる」みたいな言葉を使わないようにする迷信で、受験のシーズンには受験生の前で「滑る」とか「落ちる」とか言わないようにするという、あれです(ちなみに忌み言葉って本当はものすごい数があって、例えば結婚式ですと上にあげた以外では「飽きる」「浅い」「褪せる」「逝く」「痛ましい」「薄い」「失なう」「疎んじる」「憂い」「返す」「重ねる」「嫌う」「切れる」「壊れる」「去る」「死ぬ」「流れる」「冷える」「再び」「滅びる」「戻る」「敗る」「破れる」「病む」なんてのがあります)。忌み言葉というのは日本のようにアニミズム信仰のある国共通の概念です。アニミズム信仰のある国では言葉にも神様が宿っていますから、死ぬと言ったら本当に死んでしまいます。特に日本の言葉は強力な力がこもっているらしく、飛行機が落ちたりして、と言って本当に落ちたらその人が落としたことになりますし、運動会の前の日に雨が降ればいいのにと言って雨が降ったらその人が降らしたことになります。
ところで、これは私は日本以外では見たことがない現象なのですが、忌み言葉に通じる言葉を使いたいときにどうするかご存じですか?「する」というのは博徒や商家での忌み言葉です。お金をする(失う)に通じるからです。そこでこの「する」という言葉を全部逆の言葉に換えてしまいます。「するめ」は「あたりめ」、「すりこぎ」は「あたりこぎ」という具合になります。お茶のことをあがり、と呼ぶのもお茶を挽く(客がなくて暇なこと)にという言葉を忌み言葉として引くの反対であがる、にしたのが始まりだそうです。ちなみに、猿のことをエテ公というのも実は忌み言葉から来ています。「去る」ではなくて「得る」わけですね。


 

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