2001/10/01
馬鹿貝の話
牡蠣の話を書いたのでついでに馬鹿貝についても書きます。
子供の頃ですが、潮干狩りに行ったことがあります。砂浜を掘ると貝がざくざくと出てきて、あさりだあさりだと大喜びして片っ端からバケツに入れて、バケツが一杯になったので親に見せに行ったところ、実はそのほとんどがあさりではなく馬鹿貝で、捨てることになりました。この馬鹿貝、二枚貝網バカガイ科と、通称じゃなくて本名なのが悲しげですが、その名前の由来に諸説あります。大きく分けてもともと馬鹿だった説と本来は馬鹿ではなかった説です。もともと馬鹿だった説ではだらしなく口を開けてその舌というか足というか、をべろんと出している格好から説、そのまま蓋を閉じて自分の舌を切ることがあるから説、浜辺に打ち上げられても貝を閉じず、鳥の格好の餌食になるから説などが有名です。本来は馬鹿ではなかった説としては殻が薄く割れやすいから破家貝が変化した説と、環境の変化に敏感で、潮や砂の変化を感じるとすばやく引っ越してしまう場替え貝が変化した説があります。馬鹿馬鹿言われている馬鹿貝ですが、寿司ネタとしては非常に優秀で、貝はそのまま青柳と呼ばれて食べられていますし、貝柱と呼ばれているネタは実はこの馬鹿貝のものです。さらにその舌はシタキリと呼ばれ、ネギと酢味噌和えにして出されることもあります。しかも栄養も豊富で、特にカロチン、つまりビタミンAに富み、そのため貝柱が鮮やかなオレンジ色なのです。同じバカガイ科の仲間も寿司ネタとして良く使われており、有名なのはホッキガイ(ウバガイ)やミルガイです。馬鹿貝が寿司ネタとして青柳と呼ばれるようになった理由ですが、昔、青柳村(現在の千葉県市原市)で採れた馬鹿貝が非常に美味しかったため青柳と呼ばれるようになったということです。
最後に、馬鹿貝を用いた江戸時代の洒落を紹介します。「行徳のまな板」というのがそれです。昔行徳では馬鹿貝がよく採れ、行徳のまな板は馬鹿貝で擦れているということから、馬鹿で人擦れしていることを指す言葉です。


 

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