2002/04/24
分散コンピューティングの話1
近年の分散コンピューティングというのは、私が大学で勉強していた90年代初頭とは、質的に異なるもののようです。
ちょっと、当時のことから話しましょう。当時、コンピュータは大型コンピュータによるスター型接続が基本となっており、一台の高速演算機が全ての処理を行い、末端にある端末は、ただそれを利用するだけのまさしく端末にすぎませんでした。この仕組みですと、端末の数が増大した際に中心の大型コンピュータの処理が追いつかなくなったり、その大型コンピュータにかかるコストが膨大だったりという弊害が発生することはわかっていました。そこで、分散コンピューティングという発想が誕生したわけです。これは元々はコストパフォーマンスつまり費用対効果から考案されました。「一台の大型コンピュータより十台の中型コンピュータのほうが安い」という事情があったのです。そこでネットワークアーキテクチャ自身も見直され、リング型やウェブ型といった仕組みが利用されだし、個々のマシンがそれぞれの専門処理を請け負うサーバ群、という基本的な仕組みが誕生します。判り易く言うなら、ファイルサーバ兼ウェブサーバ兼メールサーバ兼ドメインサーバ兼FTPサーバの一台というのをやめて、ファイルサーバとウェブサーバとメールサーバとドメインサーバとFTPサーバの五台のマシンを用意しようという発想と考えてください。この仕組みは安いだけではなく、全体としてみた場合に処理速度が向上するという利点も得られました。また、マシンが故障した場合に個々の機能を持つマシンだけを入れかえれば、他の機能は影響されないという利点もありました。そのため、爆発的に広まったのです。これは分散コンピューティングの黄金期だったと言ってもよいでしょう。ところが、特に最近の企業系システムは分散コンピューティングから大型コンピュータによる処理という、逆の流れになりつつあります。これは一体何故なのでしょうか。
続きます。


 

Topへ