2002/04/17
タイムマシンの話1
ついでにタイムマシンの話も書きましょう。
私は既に「ドラえもんの科学」の中で、タイムマシンの作り方を冗談として書いていますが、あの基本的な原理自体はキップ=ソーンのタイムマシンと呼ばれる論文に基づいています。今から「ドラえもんの科学」を読むのが面倒な人のために大雑把な説明をしますと、この世界にはワームホール(アインシュタイン=ローゼンの橋)というものがあり、ワームホールからワームホールへの移動は時空外なので、距離に関係無く時間ゼロで移動できます。隣り合ったワームホールを2つ用意し、ワームホールの一つを光速で移動させ、元の場所に戻しましょう。すると、ウラシマ効果(速い速度で移動する物体の経過時間が短くなる現象)によって、移動したワームホールは過去の時間に繋がります。移動しなかったワームホールから移動したワームホールに入ると、過去の時間に戻れるわけです。つまり、タイムマシンは生成できるということです。これに対してホーキングは「未来から来たタイムトラベラーに会っていない」ことを理由に、タイムマシンの実現を否定したわけですが、キップ=ソーンのタイムマシンはホーキングの主張と矛盾しているわけではありません。なぜなら、このタイムマシンには最大の弱点があり、それはワームホールを移動させた(=タイムマシンができた)時間よりも前には戻れない、という点です。つまり、現時点では出来ていないだけで、未来にキップ=ソーンのタイムマシンが作れる可能性は残されているということになります(この点についてもホーキングは時間順序保護仮説という仮説にて、過去と未来からの輻射巡回によってキップ=ソーンタイムマシンそのものが破壊されると唱えている)。しかし、現実的な話をするなら、ワームホールを作成するためにはブラックホールが必要であり、ワームホールに突入した物体は素粒子レベルに分解されてしまうという話もあり、また、ワームホール自体が量子論でいうところの「時空の揺らぎ」によって、安定性を保つことができないという問題があります。
過去へのタイムマシンは、難しいようです。では、未来へのタイムマシンは、どうでしょうか。


 

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