2002/03/22
憲法第七条の話3
続きます。
結局、好む好まざるに関わらず、武力は必要です。これは憲法第十一条で述べられた「基本的人権」を「侵すことのできない永久の権利」とするため、また憲法第十二条に述べられた「自由及び権利は、国民の不断の努力によって」保持しなければならないため、さらには憲法第十三条に述べられた「国民は、個人として尊重される」ために、武力は必要なのです。具体的には国民が、国土に住んでいるにも関わらず、他国の船が隷従目的でやってきて攫われることを防ぐための武力です。もちろん、行きすぎた武力を持つことは決して良いことではありません。何故なら、人間は過剰な武力を保有するとそれを使用したくなりますから。そこで、自衛隊合憲論となるわけです。あくまで防衛のための軍隊であり、侵略のための軍隊ではない、という論理です。しかし、この論理には無茶があることは言うまでもありません。確実に自衛できるだけの武力は容易に攻撃に転じることができるからです。特に現在の戦場の拡大、ミサイル時代においては国際法に定められる専守防衛権と複雑に絡んでどこまでを自衛とみなすのかという点で大きな疑問があることは確かです。夢想家はアメリカの核の傘を期待していますが、実は期待できません。スエズ動乱の際にフランスが出兵しましたが、作戦を遂行しておきながらソ連の核の恫喝によって撤退せざるを得なかったという事実を忘れてはなりません(このときNATOのアメリカが守ってくれなかったという苦い経験が国際世論を敵に回してでも自国での核兵器開発にフランスを走らせることになった)。どちらにしても現在の憲法第七条は他の憲法及び現実と乖離しており、なんらかの修正が必要です。ところが、今度は憲法第十二条が問題になります。「国民の不断の努力」は徴兵制へと拡大解釈されるのではないかという懸念ですね。
私はこの件に関しては、多少の心配はあります。実は徴兵制という考え自体が現在の世界情勢から大きく後退する方策なのですが、そんなことを気にする政治家が日本に居るとは思えないので。


 

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