2000/09/17
机上戦略論(経済編)
宗教などのイデオロギーの衝突でない限り、戦争は経済です。日本が太平洋戦争に突入した理由も結局は経済的に行き詰まったところから始まっています。
ある架空戦記作家は日本の経済力が彼の方法によって史実の数倍だった、などと書いていたりしますが、そもそも日本が経済的に豊かであれば太平洋戦争に突入しなければならない理由が存在しないのです。つまり現実の予算内で作れないような超級兵器を大量生産するだけの経済力があれば戦争にはならないのです(もちろん、通常兵器を大量生産しても勝てることになり、超級兵器を製造する意味もなくなってしまいます)。そのため、よく架空戦記物では例えば大和級の製造費をすべて回して予算を捻出するなどという手法を用いて超級兵器を作るためのコストを予算範囲内、なんて書いたりします。兵器に必要なのは開発コストだけではありません。実際には運営コストが大きいのです。補給論で提示したとおり、特殊な兵器は専用の特殊な消耗品が必要ですし、巨大兵器になれば燃料を大量消費しますし、非経済的になってしまうのです。また、空母戦艦のような万能型超級兵器も架空戦記で登場します。現代の話ですが、アメリカが一時ADATSなる兵器を開発しようとしました。ADATSとはAirDifence-AntiTankSystemの略で、ようは対空ミサイルに戦車破壊用の火力を持たせようという発想でしたが、企画倒れに終わりました。対空ミサイルというのは速度が速い必要があり、破壊力は低くでも構いません。逆に対戦車ミサイルというのは速度が遅くでも火力が高ければいいわけで、速度が速くて火力の高いミサイルというのは非経済的なのです。むしろ対空車両と対戦車車両を並べて配置したほうが安上がりです。対艦能力の高い空母が非経済的なものだというのはわかりますよね。
万能型超級兵器が必要な状況というのは実は存在します。イスラエルという実在国家を考えると見えてきます。イスラエルには安価な兵器を大量に配置しても、それに載れる人手が足りないのです。そのため高価で少数精鋭になりました。ただし、これもイスラエルが超経済国家だから可能なことなのです。


 

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