2000/09/01
虫の声の話
今日から九月です。旧暦ではお正月が春の始まりです。よって秋は七月〜九月。新暦との1〜2ヶ月の誤差を考えてももう秋に入りました。たしかにセミの声が聞こえなくなり、秋の虫達が歌い出す時期も近づいてきました。誰もが知っている虫の声。松虫はチンチロリン、鈴虫はリーンリン、キリギリスはギッチョン、コオロギはキリキリキリキリ。昔から疑問に思っていたことなのですが、何故鈴虫がリンリンで松虫がチンチロリンなのでしょう。鈴の音はむしろ松虫の鳴き声に似ています。鈴虫は実際はジジジジジと鳴きます。不思議だなと思ったら、そのはず、昔はこの二つの虫は逆に呼ばれていたのです。さらにすごいことに、コオロギもキリギリスももともとの虫とは違う虫だったのです。
まず、今の松虫は本来は鈴虫で、チンチロリン。今の鈴虫は本来は松虫で、松を吹く風の音は琴の音色と響きが似ている、そこでジジジジジと鳴く虫を松虫と名づけたそうです。今のキリギリスはハタオリメと呼ばれていました。機織りの機械がギッチョン、これも納得いく話です。そして今のコオロギはこれはキリギリスです。正確にはツヅレサセコオロギというコオロギを指していました。ツヅレサセコオロギの鳴き声はキリキリキリキリですから、そのまんまでキリギリス。まとめると、新鈴虫は旧松虫、新松虫は旧鈴虫、新キリギリスは旧ハタオリメ、新コオロギは旧キリギリス。おや?では旧コオロギはいったい何者なのでしょう。そんな虫は存在していなかった、と言えればよいのですが、実はコオロギという虫がいたことは間違いがないのです。ただ、その鳴き方も姿もどこにも記載されていないため、この虫が今のなんという虫をさしていたのかは不明なのです。旧コオロギは漢字で書くと標準に無い漢字なので一部倍角になりますが「蜻虫列」と書きます。また旧仮名遣いですとこほろぎですね。
これは私の説ですが、旧コオロギはエンマコオロギを指していたのではないでしょうか。エンマコオロギの鳴き声はコオロコオロと聞こえます。また、このコオロギは昔、中国で闘虫として賭けの対象になっていました。つまり、日本にも知られていたということです。なお、虫の声はここで聞けます。


 

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